語音聴力検査

語音聴力検査とは言葉の聞き取りやすさを調べる検査です。検査音には「ア」、「キ」などの“語音”を用います。純音聴力検査と同じ防音室で、オージオメータを使って行います。オージオメータには語音の録音されたテープレコーダやCDプレーヤが接続されていて、ヘッドホンから流れる語音を聞いてその通りに発音するか、紙に書いていただきます。そして、左右各々、音の大きさを変えながら正答率を調べます。もっとも大事な指標は最大語音明瞭度です。 音自体の聞こえの程度というのは、純音聴力検査で分かるわけですが、さらに語音聴力検査も追加して行う意義としては、「難聴の原因となっている障害部位の推定」、「純音聴力検査の結果の信頼性の確認」、「補聴器を付けた場合、効果があるかどうかの推定」などがあります。 以下、それぞれについて説明したいと思いす。 

まず「難聴の原因となっている障害部位の推定」ですが、聴力正常な場合や伝音難聴では、ある程度音を大きくすると語音は100%近くまで間違わずに聞き取ることが出来ます。それに対して感音難聴では、いくら音を大きくしても最大語音明瞭度が上がらなくなります。聞き取りやすい音の大きさの範囲が狭くなって、それ以上音の大きさを大きくすると、むしろ言葉の聞き取りが悪くなってしまうのです。 また、ごくまれに見られる後迷路性難聴では、純音聴力検査の結果に対して語音の聞き取りが極端に悪くなります。これは、内耳までは正常でも脳の中の聴覚伝導路のどこかが障害されているために起こる現象です。 

次に「純音聴力検査の結果の信頼性の確認」ですが、通常は純音聴力検査の閾値(ぎりぎり聞こえる音の大きさ)よりも40dB前後大きな音で最大語音明瞭度が得られます。ところが純音聴力検査が上手くできていない場合や、心因性難聴あるいは機能性難聴といわれる難聴の場合は、逆に語音聴力検査の結果の方が良好な結果を示すことがあります。ですから、明らかに会話可能なのにもかかわらず、純音聴力検査で高度な難聴を示す場合などには、さらに語音聴力検査も追加して行います。

最後の「補聴器を付けた場合、効果があるかどうかの推定」です。補聴器を装着する最も大きな目的は、人の話を聞き取ると言うことです。ですから、いくら音が大きく聞こえても語音の聴取がうまくいかなければ補聴器はあまり役に立たないと言うことになります。目安として最大語音明瞭度が50%以下ですと補聴器を付けても満足な結果が得られないことが多いようです。ですから語音聴力検査によって予めどの程度補聴器が役に立つのかということも判りますし、片側だけに補聴器を付ける場合にはどちらの耳に付けた方がいいかの指標ともなるのです。